デート紛い(後編)

前編のあらすじ(適当)

センター試験会場で偶然出会った美少女Mに恋をしたT。3ヶ月後、Tの元同級生であり、Mの親友でもあるLに頼んで新宿でデート(?)することになったのであった…

 

 

女二人での服のショッピングに男はいらない、というわけで二時間程駅周辺で待たされる羽目になってしまったが、なんやかんやで合流することになった。

が、ここは新宿駅である。乗降者数世界ナンバーワンの駅である。JR、京王、小田急をはじめとする有名な鉄道会社らが創り上げた都内最高難易度ダンジョンである。

 

迷った。

 

「あいつらはどこにいるんだ…」

 

東口っつったって広いのである。周りの風景を説明してもらうなどして、数分後にようやく合流した。これで第一印象マイナス3くらいであろう。リカバーしよう。

 

3人とも田舎の地方都市から出てきた身分ということもあり、東京はやべぇなという世間話をダラダラとしながら、東新宿の方にあるスープ系の料理を専門としている店へと向かった。地図曰く最短ルートで徒歩15分くらいであり、ダベりつつ歩くには丁度いい…はずだった。

 

それはTOHOシネマズの前を通って歌舞伎町を横切ったときのことである。

 

HOTEL○○」

HOTEL△△」

「☆☆ホテル」

 

新宿をふらふら歩いたことのある、もしくは意図的に利用したことのある人間ならばお気づきだろう。

 

 

私は女の子2人を連れてラブホ街にたどり着いてしまったのである。

 

 

一瞬、空気が凍った気がした。

 

 

やっちまったぜ。

こういうとき、どうするのが得策か?

「あーごめん…所謂ホテル…街突っ切っちまうわこのルート…ごめん…」

「うわめっちゃホテルあるwwwww写真撮ろwwwww」「撮ろうwww」

思ったよりノリノリである。女の子2人でよかった…1人だったら死んでた…でも多分内心少し引いてるだろこれ…印象マイナス150とかだ…とひとり脳内で泣いた。

 

いいですか皆さん。彼女のいない僕でもできる唯一のアドバイスです。

デートするときは予め下見をしておきましょう。

 

その後無事にスープ屋にたどり着き3人でテーブルを囲んで話をしたが、基本的には大学生活の話がメインのガールズトークに相槌を打つことが多かった。どうやらLとMも久し振りに会ったらしく、話したいことがたくさんあったようだった。まあ聞いてて面白かったからいいとしよう。肝心のMとは良い感じに会話できてはいないような気もするが気にしたら負けである。

 

その後帰る途中でMがスマホを店に忘れてきたことに気づいて、ヒールではなくスニーカーの僕が率先して閉店後の店まで走って取りに行くなどして好印象を与えようとした(これはマジで惚れてまうやろ、すんませんそんなことないですね)。しかし所詮は「良い人」止まりだったような気がする。

こちらもLINEを入手したくらいしか成果は無かった。まあ十分デカイか。

 

新宿駅で別れ、自分にしてはよくやった方だ、と思いながら家に帰った。帰り道みんなで店に寄って買ったドーナツを一人で食べた。なんとなくまたみんなで何か食べることはないような気がした。

 

 

その後はMに対して、ゴールデンウィークに水族館デートに誘ってみたり、文化祭である五月祭に来るように言ってみたりしたが、「Lが焼き餅焼いちゃうよ〜」などとようわからんことを言われてのらりくらりと躱されていた。一度3人でご飯を食べたので、いざ2人きりというのはなかなかハードルが高くなってしまったようだ。

 

だがこちらは恋愛不慣れの童貞である。恐れる事など何も無い。こういうときは押して押して押しまくるものだとクラスのリア充は言うので参考にしつつ、7月、ついに勝負に出た。手練れの私文女子大生と頭脳派理系男子大学生の戦いの幕が切って落とされた。

「一緒に隅田川花火大会見に行きませんか?」

 

 

既読スルーされてそろそろ10ヶ月経つ。